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1.視聴率データの活用例
テレビCMの広告効果を最大化するには、視聴率データを深く分析し、多様な視点から戦略的に活用する知見が成功への鍵を握ります。ここでは、具体的な活用例をご紹介します。
社会トレンドと生活者のインサイト把握
テレビ視聴率は、特定の番組の瞬間的な視聴状況に留まらず、長期間の推移を分析することで、国民全体の生活習慣や関心事の変化、社会的なトレンドを読み解く貴重な手がかりとなります。例えば、特定のジャンルの番組が高視聴率を維持している場合、その分野への世間の関心が特に高いと判断できます。この洞察は、貴社の商品やサービスのマーケティング戦略に活かす新たなヒントや方向性をもたらし、新たなビジネスチャンスの発見にも繋がるでしょう。
競合調査のデータとしての活用
競合他社のCM出稿状況を視聴率データから分析することは、彼らがどのターゲット層に、どのような時間帯や番組で積極的にアプローチしているかを把握する上で極めて有効です。特に、業界内の主要プレイヤーが多額の予算を投じていると見られる高視聴率の枠や番組帯を特定することは、自社の戦略立案において重要な示唆を与えます。これにより、競合のマーケティング戦略を予測し、差別化戦略や効果的な対抗策を検討するための客観的な材料が得られるでしょう。
2.視聴率データを駆使した効果的なプランニング・効果分析
1)戦略設定とターゲットの明確化
テレビCM出稿の第一歩は、目的と目標を明確にすることです。商品やサービスの特性、マーケティング課題に基づき、予算策定、KGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)を設定します。例えば、認知度向上、特定層へのリーチ拡大、サイトへの誘導数増加、店舗への来店促進、購買意欲向上などがKPIとなり得ます。これらの具体的な目標を定めることで、CM出稿の必要性や期待効果が明確になり、その後の全ての意思決定の基準となります。
2)最適なメディアプランの策定
設定した目標を達成するため、過去の視聴率データ分析に基づき、ターゲット層が最も効率的に視聴している番組や時間帯、効果的な放送局を選定します。ここでは、性年代などのターゲット視聴率に加え、前述のターゲットパーコスト(TPC)を重視します。これらの指標を用いて、費用対効果が最大化されるよう、エリア配分、タイムCM・スポットCMの検討、局配分を決定します。ターゲットへのリーチを最大化しつつ、限られた予算内で最適な露出機会を設計することが、メディアプランニングの鍵となります。また、リアルタイム視聴だけでなく、タイムシフト視聴率も考慮し、録画視聴層へのアプローチも視野に入れることが現代では重要です。
視聴率データは、特定のエリアや視聴者層の詳細な分析と合わせて、最適なCMプランを立案するための重要な材料となります。しかし、その捉え方には注意が必要です。
視聴率が高い=良い番組?の落とし穴
テレビ番組の「視聴率」は、その番組がどれだけ多くの世帯や個人に見られたかを示す、最も一般的な指標です。しかし、視聴率が高いからといって、必ずしも「良い番組」であるとは限りません。 なぜなら、視聴率はあくまで「視聴された量」を示す指標であり、番組の内容の質や、視聴者がその番組から得た感動、満足度といった「質的な価値」を直接的に評価するものではないからです。例えば、世間的な話題性で一時的に視聴率が高くなった番組もあれば、一部の熱狂的なファンに深く支持され、社会に大きな影響を与えるものの、視聴率としては突出しない番組も存在します。番組評価においては、視聴率だけでなく、ターゲット層の評価、SNSでの反響、番組内容の深掘りなど、多角的な視点が必要です。
ターゲット視聴率とターゲットコストの重要性
では、テレビCMの出稿においては、視聴率をどのように捉えるべきでしょうか。CMの効果を最大化するためには、単に番組全体の視聴率が高いかどうかを見るだけではなく、番組自体のターゲット視聴率の傾向を把握することも重要になります。
特に効果的なスポットCMを実施する上では、以下の2つの指標を掛け合わせた視点が欠かせません。
- ターゲット視聴率(TRP:Target Rating Point): ターゲット層が、特定の番組や時間帯をどのくらい視聴しているかを示す指標です。
- ターゲットパーコスト(TPC:Target Per Cost): ターゲット視聴率1%を獲得するためにかかるコストを示す指標です。
なお、タイムCMでは番組全体の視聴傾向を詳細に見てプランニングしますが、スポットCMの場合は、特定の番組だけでなく、放送局のタイムテーブル全体のターゲット視聴率の傾向を把握することも重要になります。例えば、F1層(20~34歳女性)をターゲットとする商品のCMを出す場合、そのターゲット層の個人視聴率が高い番組や時間帯を選ぶことで、より効率的かつピンポイントに、狙った視聴者にリーチできます。テレビ局は、このような個人視聴率のデータに基づき、CM放映枠をランク付けしています。一般的に、ターゲットとする個人視聴率が高い枠ほど、より多くのターゲット層にリーチできる可能性が高まるため、CM出稿にかかるコストも高くなる傾向があります。
したがって、CM出稿を計画する際は、単に「視聴率の高い枠」を選ぶのではなく、自社のターゲット層の視聴実態と限られた予算を考慮し、最も費用対効果の高い出稿パターンを戦略的に検討する必要があります。視聴率データはCM効果測定の核となる重要な要素ですが、それだけで全てが決まるわけではないのです。
3)視聴傾向を加味したクリエイティブ制作との接着
メディアプランニングと並行して、ターゲット層の心に響くメッセージや表現を開発するクリエイティブ制作を進めます。CMの企画、コピーライティング、映像・音声表現など、ターゲットのインサイトに基づいたクリエイティブは、どれだけ多くの人に見られても、記憶に残らなければ十分な効果を発揮しない可能性があります。視聴率データによって「誰に、どれだけ見られるか」を設計すると同時に、クリエイティブによって「見た人に、何をどう感じてもらうか」を追求することで、CM効果の最大化を目指します。
4)効果測定
CM放映後は、放映後の視聴率データを活用して分析を行い、設定したKPIに対する効果検証をします。視聴者の購買行動プロセスである「認知」「興味」「検討」「行動」の4段階(またはファネル)に分け、それぞれの段階に適切な指標を用いることが重要です。
具体的には、認知段階ではブランド認知度の変化を測るブランドリフト調査、興味段階では商品やサービスへの関心度を測る態度変容調査や指名検索数の分析、検討段階ではWebサイトへのアクセス数や資料請求数の変化、行動段階では実際の購買数や問い合わせ数といったビジネス指標を追跡します。
テレシーアナリティクスを活用した効果的なPDCAサイクル
テレビCMのPDCAサイクルを回す上で、精緻なデータ活用は不可欠です。テレシーでは、ビデオリサーチの視聴率データをはじめとする多様な分析データを活用し、その核となる「テレシーアナリティクス」を通じて効果的なCM戦略の実現をサポートします。
「テレシーアナリティクス」は、広告主の目的に応じた独自の2つの分析手法を駆使し、膨大なデータを精緻に分析します。これにより、放送局や放映エリア、放映時間、番組、さらにクリエイティブごとの効果を定量的に測定でき、各要素における広告効果を詳細に把握することが可能です。このようにして得られたデータを活用し、テレビCMのPDCAサイクルを効率的に回し、広告効果を最大化するための戦略立案・実行が可能となります。
本シリーズでは、テレビCMの視聴率に関する基礎から、戦略的な活用術までを網羅的に解説しました。複雑化する現代のメディア環境において、この視聴率データを読み解き、自社の戦略に落とし込む力こそが、テレビCMの効果を最大化し、事業成長を加速させる鍵となります。
「テレシー」は本記事でご紹介したポイントを踏まえ、クライアント企業の課題に対して、運用型テレビCMを軸とした統合的なマーケティング・コミュニケーションサービスを提供しています。戦略策定からCMクリエイティブの企画制作、メディアプラニング、効果分析まで一気通貫して、クライアント企業に伴走し事業成長に貢献します。