
1.テレビの視聴率とは?
そもそも視聴率とは、テレビ番組やテレビCMが放送されていた時間にどれだけの人々に視聴されたかを計測する指標の一つであり、特定の時間帯における視聴者の割合を示します。視聴率の測定をしている会社は多々ありますが、テレビ局や広告業界ではビデオリサーチ(VR)という調査会社の視聴率データを活用しています。視聴率データは放送エリアごとに調査されており、視聴率を測定することで、その番組やCMがどのくらい見られたのかを確認する事ができます。
ただし、一部世帯の調査結果から統計的に算出されるため、視聴率の数値にはある程度の誤差が生じる可能性もあります。
2.視聴率の計測方法
ピープルメーターシステム(PMシステム)
視聴率の計測方法にはいくつかの種類がありますが、現在中心的に用いられているのがピープルメーターシステム(PMシステム)で、調査に協力している世帯に設置された専用の測定器(ピープルメーター)を通じて視聴データを収集する方法です。このシステムでは、視聴者はテレビを見る際に、属性情報(性別、年齢など)と紐づけられた個人専用のリモコンボタンを押します。これにより、「誰が、いつ、どのチャンネルを視聴したか」という詳細なデータがリアルタイムで記録・集計されます。
PMシステム最大の特長は、世帯全体が見ていたかを示す「世帯視聴率」だけでなく、個人ごとの視聴状況を把握できる「個人視聴率」を測定できる点です。これにより、特定のターゲット層(例:20代女性、50代男性など)がどれくらい番組やCMを視聴したかを詳細に分析することが可能となり、より精緻な広告戦略や番組編成に活用されています。
参考:過去と現在でこんなに違う!視聴率計測の歴史
現在、視聴率計測の主流であるPMシステムが普及する以前は、テレビの視聴状況を把握するために主に以下のような方法が用いられていました。これらの旧来の方法は、当時の技術的な制約の中で活用されていましたが、現在のシステムと比べるとそれぞれに課題を抱えていました。
機械式世帯視聴率調査システム
- 概要: 特定の対象家庭に専用の機械を設置し、インターネット回線または電話回線を通じて視聴データを計測する方法です。手動で記録するピープルメーターとは異なり、テレビの視聴状況を完全自動でリアルタイムに集計されます。
- 特徴と課題: 完全自動かつリアルタイムでの計測が可能である一方で、世帯視聴率しか測定できず、個人の視聴状況を把握することはできませんでした。
日記式アンケート調査
- 概要:調査に協力いただく世帯へ専用の調査用紙(日記)を配布し、テレビを視聴した人が「いつ、誰が、どの番組を、何分間見たか」などを手書きで記録します。この方法は、ビデオリサーチと各地区の放送局で決めた任意の時期・期間で行われますが、通常は1週間単位での記入が依頼された後にデータが集計されます。
- 特徴と課題: 当時としては、個人が視聴した番組を記録できる点が特徴でした。しかし、記入忘れや記憶違い、あるいは人気番組を見ていたと「自己申告」してしまうといった人為的な誤差やバイアスが生じやすいという課題がありました。また、リアルタイムでの速報性はありませんでした。
これらの旧来の計測方法が抱えていた「人為的な誤差」「リアルタイム性の欠如」「誰が見ているかの不明瞭さ」といった課題を克服するために開発されたのが、PMシステムです。PMシステムは、自動でテレビの視聴状況と個人属性を紐づけてリアルタイムで収集・集計することで、より正確で詳細な視聴率データを提供し、現代のCM戦略や番組編成において不可欠な情報源となっています。
3.視聴率の主な指標の種類
近年のテレビ視聴は、リアルタイムでの視聴だけでなく、録画して後から見る「タイムシフト視聴」など、多様な形で行われています。このような視聴環境の変化に対応し、より正確な視聴実態を把握するために、視聴率にも様々な指標が存在します。
リアルタイム視聴率
普段、ニュースなどでよく耳にする「世帯視聴率」や「個人視聴率」は、この「リアルタイム視聴率」のことを指しています。地上波放送、BS放送、一部の専門チャンネルなどの放送中にリアルタイムで視聴している世帯、または個人割合を示す指標となります。
タイムシフト視聴率
タイムシフト視聴率とは、番組の放送終了後から7日以内(168時間以内)に録画やオンデマンドで視聴された割合を示す指標となります。近年の録画機器の普及やライフスタイルの多様化に伴い、このタイムシフト視聴が占める割合は増加傾向にあります。
延べタイムシフト視聴率
タイムシフト視聴に関連して、「延べタイムシフト視聴率」という指標も存在します。これは、放送後7日以内のタイムシフト視聴において、同一の個人が同じ番組を複数回視聴した場合、その視聴回数分をカウントして算出される指標です。例えば、お気に入りのドラマや映画の特定のシーンを繰り返し見たり、内容を深く理解するために複数回視聴したりといった行動は、タイムシフト視聴率には1回としてカウントされますが、延べタイムシフト視聴率ではその回数分が加算されます。この指標は、視聴者の番組に対するエンゲージメントの高さや、コンテンツのリピート性を測る上で参考になります。
総合視聴率
「リアルタイムで視聴されたか、またはタイムシフトで視聴されたかのいずれか一方」、あるいは「両方で視聴された」割合を示す指標です。リアルタイムでもタイムシフトでも視聴した場合は"1カウント(複数回視聴としてカウントしない)"として集計します。
つまり、「総合視聴率=〈リアルタイム視聴率〉+〈タイムシフト視聴率〉−〈重複視聴率〉」となり、番組単位での視聴の拡がりを示す指標となります。
これらの指標を理解することで、単なる瞬間的な視聴率だけでなく、番組やCMがどのように、そしてどのくらいの人々にリーチしているのかを多角的に捉えることが可能になります。
4.世帯視聴率と個人視聴率とは?
テレビ番組やテレビCMの効果を測る指標として広く知られている「視聴率」ですが、大きく分けて「世帯視聴率」と「個人視聴率」の2種類が存在します。これらの指標の違いを理解することで、番組の視聴傾向や視聴者の動向をより正確に把握することができます。
世帯視聴率(GRP)
世帯視聴率(GRP)は、調査対象となるテレビを所有している世帯のうち、ある特定の時間帯にどのくらいの世帯でテレビを視聴していたか?を表す割合です。GRPとはGross Rating Point(グロス・レーティング・ポイント)の略語で、テレビCMを放映した一定期間における延べ視聴率を意味します。世帯視聴率は世帯数をカウントするため、詳細な視聴人数までは把握できません。
例:調査対象の100世帯のうち、5世帯がその番組を視聴していた場合、世帯視聴率5%になる
個人視聴率(PRP)
個人視聴率(PRP)は、調査対象世帯内の4才以上の家族全員を対象に、どれくらいの割合の人がテレビを視聴していたか?を示す割合です。PRPとはPersons Gross Rating Point(パーソンズ・グロス・レーティング・ポイント)の略語で、個人の延べ視聴率を意味します。世帯単位で延べ視聴率を算出するGRPに対して、特定の時間帯に個人がどれくらいテレビを視聴していたかを示す割合となるため、性別・年齢ごとの視聴率を把握する際に用いられます。
例:調査対象の個人100人のうち、5人がその番組を視聴していた場合、個人視聴率5%になる
視聴率の種類 | 説明 | 計算方法 |
---|---|---|
世帯視聴率(GRP) | テレビを所有している世帯のうち、テレビを視聴している世帯の割合 | テレビを視聴している世帯数÷調査世帯数 |
個人視聴率(PRP) | 世帯内にいる4歳以上の家族全員のうち、誰がどのくらいテレビを視聴してたかの割合 | 調査世帯に住んでいる人数の合計÷テレビを視聴している人数 |
参考:個人視聴率の区分詳細
個人視聴率の大きな特徴は、視聴者を多様な「区分」で捉えることができる点にあります。代表的な区分は、以下のような性年代別による8区分となり、これにより、ターゲット層の視聴実態をより詳細に分析し、精度の高いCMプランニングを行うことが可能になります。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
4~12才 | C(Child) | C(Child) |
13~19才 | T(Teen) | T(Teen) |
20~34才 | M1 | F1 |
35~49才 | M2 | F2 |
50才以上 | M3 | F3 |
テレシーでは、放送局が保有する性年代別区分以外にも、年収、地域特性、職業、1歳刻みでの年齢区分など、ターゲットに狙いを定めた上でプランニングを行うことが可能です。これらの区分を組み合わせることで、よりニッチで具体的なターゲット層の視聴行動を把握することができます。
なお、特定の区分で絞り込まず、調査対象の4歳以上の個人すべてを対象とする視聴率は「個人全体」と呼ばれます。単に「個人視聴率」と記載されている場合も、この「個人全体」を指すことが一般的です。
5.「視聴率1%」の意味することは?
「視聴率1%」あたりの視聴人数
テレビ番組の視聴率が話題になることがありますが、1%の視聴率が実際何人の視聴者に相当するのかご存知でしょうか?
視聴率1%が表す人数は視聴率調査の対象エリアによって異なりますが、関東地区※1で考えると1%につき39.9万人が番組を見ていることになります。(個人全体の場合)
エリアや特性によって人口が異なるため、当然1%あたりの人数も変わります。関東地区以外のエリアにおいては上記に該当しないので注意が必要です。
※1:関東地区の自家用TV所有推定人口は39,932千人
出典:(株)ビデオリサーチ「2024年度 調査エリア内推定世帯数及び人口」より引用
世帯視聴率と個人視聴率の推定値
よく、視聴率が「高い」もしくは「低い」といいますが、仮に1%の視聴率でも実世帯数・実人数ベースで換算すると相当な数に到達します。
- 世帯視聴率1%の場合:関東地区で約18万世帯が視聴と推定
- 個人全体視聴率1%の場合:関東地区で約39.9万人が視聴したと推定
本記事では、テレビCMの視聴率の基礎知識についてご紹介してきました。関連記事である『テレビCMの視聴率➁~活用篇~』では、視聴率データの具体的な活用例や効果的なプランニング・効果分析について解説しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
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